キャリアコンサルタントの倫理 『倫理的課題への対応事例検討』はどんな講習?その2~医療倫理の歴史~

こんにちは。ビヨンド・ワーズの越です。

前回のコラムでは、私が倫理を学びはじめたきっかけについて、書きました。今回から、ようやく倫理の本題に入っていこうと思います。

私達キャリアコンサルタントの倫理の基盤になっているのは、医療倫理です。

医療倫理には4つの原則があります。

医療倫理の四原則は、トム・L・ビーチャム教授(哲学者)とジェイムズ・F・チルドレス教授(哲学者、神学者)が『生命医学倫理』(1997)で提唱したもので、医療従事者が倫理的な問題に直面した時に、どのように解決すべきかを判断する指針となっています。

• 自律性の尊重(respect for autonomy)
• 無危害(non-maleficence)
• 善行(beneficence)
• 公正(justice)

『生命医学倫理』は、すでに絶版となっており、Amazonでは6万円になっていました。

読んでみたいと思いつつ、手が出せないお値段、、、

トム・L・ビーチャム教授は、先月2月19日に亡くなられたそうです。御冥福をお祈りいたします。

そして、歴史を遡ってみると、この医療倫理の四原則に近いものが、なんと紀元前400年前にすでに発表されているのです。

場所は、ギリシャ。

紀元前400年前、医療は、「呪術」でした。病気は呪いや天罰とされ、治療は呪術や魔術的なものが多かったそうです。例えば、体内から悪霊を追い出すために、呪文を唱えたり、神秘的な力を持つ薬草を飲ませたり、、、

そんな時代に、エーゲ海のコス島に生まれたヒポクラテス医師は、健康・病気を自然の現象と考え、科学に基づく医学の基礎を作ったことで「医学の祖」と称されています。彼の弟子たちによって編纂された「ヒポクラテス全集」のなかに、「ヒポクラテスの誓い」という医師の職業倫理の宣言文があります。これは、世界中の医学教育に大きな影響をあたえ、1948年には、現代的な言葉になおしWMA(世界医師会)のジュネーブ宣言に繋がりました。


ヒポクラテスの誓い

医神アポロン、アスクレピオス、ヒュギエイア、パナケイア、およびすべての男神・女神たちの御照覧をあおぎ、つぎの誓いと師弟契約書の履行を、私は自分の能力と判断の及ぶかぎり全うすることを誓います。

 この術を私に授けていただいた先生に対するときは、両親に対すると同様にし、共同生活者となり、何かが必要であれば私のものを分け、また先生の子息たちは兄弟同様に扱い、彼らが学習することを望むならば、報酬も師弟契約書もとることなく教えます。また医師の心得、講義そのほかすべての学習事項を伝授する対象は、私の息子と、先生の息子と、医師の掟てに従い師弟誓約書を書き誓いを立てた門下生に限ることにし、彼ら以外の誰にも伝授はいたしません。

 養生治療を施すに当たっては、能力と判断の及ぶ限り患者の利益になることを考え、危害を加えたり不正を行う目的で治療することはいたしません。

 また求められても、致死薬を与えることはせず、そういう助言も致しません。同様に婦人に対し堕胎用のペッサリーを与えることもいたしません。私の生活と術ともに清浄かつ敬虔に守りとおします。

 結石の患者に対しては、決して切開手術は行わず、それを専門の業とする人に任せます。

 また、どの家にはいって行くにせよ、すべては患者の利益になることを考え、どんな意図的不正も害悪も加えません。とくに、男と女、自由人と奴隷のいかんをとわず、彼らの肉体に対して情欲をみたすことはいたしません。

 治療の時、または治療しないときも、人々の生活に関して見聞きすることで、およそ口外すべきでないものは、それを秘密事項と考え、口を閉ざすことに致します。

 以上の誓いを私が全うしこれを犯すことがないならば、すべての人々から永く名声を博し、生活と術のうえでの実りが得られますように。しかし誓いから道を踏み外し偽誓などをすることがあれば、逆の報いをうけますように。

大槻マミ太郎訳:誓い.小川鼎三編、ヒポクラテス全集、第1巻、エンタプライズ、東京より引用

 こうして医療倫理の歴史を振り返ると、クライアントの意思決定を尊重することが重要であり、しかし、そうでなかった歴史があることが分かります。

次の記事では、医療倫理の四原則の内容を見ていこうと思います。

この医療倫理の四原則は、私達が臨床で困ったときに、判断の拠り所となる軸になります。

それでは、また次回。

(記事担当講師)
キャリアコンサルタント技能更新講習
倫理的課題への対応事例検討~現場で生じる守秘義務の例外~
担当講師 越 希美江(1級キャリアコンサルティング技能士・公認心理師)

倫理シリーズ

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